202410/28

スマホでオンライン投票は可能になる?選挙投票のデジタル化のための課題とは

皆さんは、昨日の衆議院選挙に行きましたか?
選挙のたびに、投票に行かない若者が問題になる日本ですが、一方では候補者のSNSの活用やショート動画等のデジタルコンテンツの活用が効果を上げたというニュースもあり、もしも選挙投票がデジタル化され、投票所に行かなくても手元のスマートフォンからどこでもオンライン投票が可能になれば、若者をはじめ投票する人が増えるのではないかという気がしますよね。

ジャンプスのようにホームページ制作の仕事をしていてIT業界の中にいると、より一層、選挙投票もデジタル化すればいいじゃん!と思うのと同時に、でもデジタル化するのも大変かも?と思ったりもします。
今日はそんな選挙投票のデジタル化について、ホームページやシステムの制作とも共通する問題点や課題を取り上げてみましょう。

まず、選挙投票のデジタル化がもたらすメリットとしては以下が挙げられます。

  • 運営側にとってのメリット:効率的かつ迅速な投票結果の把握を可能にする。
  • 投票者にとってのメリット:投票所に出かけなくても自宅や勤務先で投票でき、有権者の投票率の向上につながる。
  • 立候補者にとってのメリット:自分のSNSやショート動画から投票サイトに直接リンクを貼って、自分への投票を促すことができる。

こうして見ると、選挙運営サイド、投票者、立候補者の全てにメリットがあるじゃないか!すぐにデジタル化するべきだ!と思うかもしれません。
しかし多くの国では未だ紙の投票が主流です。これは以下のような原因があるからです。

1. 安全性と信頼性の問題

  • ハッキングのリスク:
    これは企業のホームページやシステムにも共通して言えることですが、サイバー攻撃の脅威はインターネット上のコンテンツにはついて回る問題です。
    ジャンプスでもホームページの制作の現場では、常時SSL化や、WordpressなどのCMSやプラグインを最新に保つ等のセキュリティ対策を行っています。
    特に重要な政治イベントでのサイバー攻撃は社会的な混乱を引き起こす可能性があり、デジタル投票システムがサイバー攻撃のターゲットになると投票の信頼性が脅かされてしまいます。
  • データの改ざんリスク:
    電子的な投票結果が不正に操作されるリスクがあり、選挙の公正性が損なわれる可能性があります。これは特に国民の信頼を得にくい要因となっています。

2. プライバシー保護

  • 匿名性の確保:
    電子投票は投票者の匿名性を守るのが難しい面があり、誰が誰に投票したかを完全に守ることが難しいとされています。
    例えばマイナンバーカードを使用して投票を行った場合に、そのままでは投票先の情報が個人と結びついてしまいますから、それを切り離す必要が生じます。
    多くの国で投票はプライバシーの権利が重視されるため、こういった信頼性が重要です。

3. 技術の安定性

  • システム障害のリスク:
    選挙当日にシステム障害が発生すると、投票が行えなかったり、結果が信頼できなくなる可能性があります。
    実際に今回の衆議院選挙でも、投票所を訪れた人の管理に使用しているシステムに障害が生じ、投票に来た人が帰ってしまうという事例が発生しました。
    ホームページでもアクセスが集中するとサーバーがダウンしたりアクセスしづらくなるという問題が生じますが、投票所を訪れた人の管理だけではなく投票自体も完全にデジタル化した場合、システムダウンやバグによるトラブルが発生しないよう、安定したインフラが必要です。
  • 通信環境の不平等:
    特に地方や発展途上国では、安定したインターネット接続がない場所も多く、また経済的な格差により選挙投票に対応している機器を持てない国民も出てくる可能性があることから、全ての国民が平等に投票できないという課題もあります。

では、これらの問題を解決してデジタル化を進めるために必要な要素について見ていきましょう。

1. 高度なセキュリティ技術

  • ブロックチェーン技術の導入:
    改ざんが難しいブロックチェーン技術を活用することで、投票データのセキュリティと透明性を向上させることが可能です。また、分散型システムにより攻撃耐性が高まります。
  • 多要素認証:
    投票者が自分の身分を確実に証明できるようにし、本人確認を厳格に行う必要があります。顔認証や指紋認証など、生体認証の技術も考慮されます。

2. 国民の信頼を得るための試験運用

  • 小規模でのパイロットプログラム:
    最初は小規模な自治体や組織内でデジタル投票システムを試験運用し、実績を積むことで信頼を獲得することが有効です。成功した運用事例が増えることで、デジタル投票への不安が軽減されます。
    既に日本でも、試験的なデジタル投票システムの運用テストは行われています。
  • 透明性のある監視機関:
    第三者機関がシステムのセキュリティと公正性をチェックし、投票システムの監視を行うことも必要です。信頼できる監視機関がデジタル投票のプロセスを保証することで、透明性を保つことができます。

3. インフラ整備と教育

  • 通信環境の整備:
    国全体に安定したインターネット環境を整備し、経済的な理由で端末を持てない個人のために公的機関での投票端末のサービスも提供することが必要です。また、無人地帯や世界的な観点では発展途上国での投票環境の整備も考慮されるべきです。
  • デジタルリテラシー教育:
    特に高齢者や技術に不慣れな層が安心して投票を行えるよう、デジタル投票の仕組みや利用方法についての教育が求められます。
    教育プログラムの充実によって、デジタル投票の使用に対する不安が減少します。

これらの課題をクリアして、実際にデジタル化されたオンライン投票が導入されている国もあります。
エストニアはその例で、2005年に世界で初めて全国規模の選挙でオンライン投票を導入しました。エストニアの「i-Voting」システムは、インターネットを通じて投票ができる仕組みで、選挙ごとに多くの国民がこの方法で投票しています。
日本のマイナンバーカードとは異なりますが、エストニアには「e-Residency(電子居住証)」制度があり、これを使って個人認証を行うことで投票のセキュリティを確保しています。ブロックチェーン技術も活用し、透明性と信頼性を高めています。

エストニアのようにインターネットを通じた完全なオンライン投票が行われているのは稀な例で、多くの国ではまだ信頼性やセキュリティの課題に取り組んでいる段階です。
このようにデジタル投票の導入には慎重な計画が必要ですが、将来的にオンラインで投票できる便利なシステムが確立されることを期待したいですね。