202501/21

紙の完全デジタル化は起きるのか?紙とデジタルのメリット・デメリットとWEB制作

ペーパーレスや電子化、デジタル化の波は近年の印刷業界を脅かしています。
そんな中で先日、文部科学省がデジタル教科書を正式な教科書とし、紙の教科書とデジタル教科書のどっちを使用するかは各教育委員会の選択制にする制度の導入を検討しているというニュースがありました。
ついに教育現場でも、教科書のデジタル化が本格的に進められようとしているようです。

ジャンプスも親会社の重富プラスは印刷をメインにしている印刷会社です。
デジタル化の動きに対応するため、ジャンプスと一緒にWEB制作を手がけたりと時代の流れに応じた変化を取り入れてはいるのですが、実際にこの先、紙の印刷物がこの世からなくなり、紙媒体だったコンテンツが完全にデジタル化する未来は待っているのでしょうか?

今回は、紙とデジタルそれぞれのメリットデメリットを比較して、我々WEB制作やデジタルコンテンツの制作現場では何をすることでよりデジタルのデメリットを減らせるのか、また紙媒体の印刷業界では生き残りのために紙のどんなメリットを活かすことができるのかを検討してみましょう。

紙の書籍とデジタル書籍

皆さんは最近、紙の書籍を購入しましたか?
ジャンプスの社員はIT業界に慣れ親しんでいるということもあって、最近は皆もっぱら購入するのは電子書籍で、紙媒体の書籍は久しく購入している人がいません。

紙の書籍と電子書籍それぞれのメリットデメリットを比較してみましょう。
まずは、昔から存在している紙の書籍のメリットとデメリットを見てみます。

紙の書籍のメリット

  • 物理的な感覚
    紙の質感やページをめくる感覚が読書体験を豊かにする。
  • 集中しやすい
    通知やアプリの干渉がないため、読書に集中しやすい。
  • 所有感とコレクション性
    書棚に並べることで所有感やインテリアの一部としても楽しめる。
  • 長期保存に適している
    デジタル機器が不要で、適切な環境で保管すれば数十年にわたって利用可能。

紙の書籍のデメリット

  • 収納スペースが必要になり、かさばる
    携帯性に欠け、重さや大きさが移動中の読書を妨げる場合がある。
  • 検索性が低い
    必要な情報を素早く見つけるのが難しい。
  • 環境負荷
    紙の製造過程で木材や水資源を消費する。
  • 劣化のリスク
    湿気や日光による損傷の可能性がある。

では、デジタル技術の進歩によって出現した近年の電子書籍はどうでしょうか?

デジタル書籍のメリット

  • 携帯性
    スマホやタブレット一台に何百冊もの本を収納できる。
  • 検索性
    特定のキーワードや章を素早く検索できる。
  • カスタマイズ性
    フォントサイズや背景色を調整して読みやすくできる。
  • 環境負荷が少ない
    物理的な資源を消費しないため、持続可能性の観点で優れる。
  • 購入の即時性
    オンラインで購入すればすぐに読める。

デジタル書籍のデメリット

  • デバイス依存
    電源が切れると読めない。専用デバイスが必要な場合も。
  • 集中力や記憶力の処理が低下する可能性
    ライトによる目の疲労、視認性の問題や、他のアプリや通知が気を散らす。
  • 長期的な保存の不確実性
    データフォーマットの変化やサービス終了によりアクセス不能になるリスクがある。
  • 感覚的な満足感の欠如
    紙の書籍の質感や香りといった体験が得られない。

紙の書籍の最大の特徴とも言えるのは、物理的な物質として存在しているということです。
コレクション性や所有感は圧倒的に紙のほうが上であると同時に、大量に持ち歩くには重たく、部屋の中では本棚など収納スペースが必要になるという側面を持っています。

一方のデジタル書籍では、質量や体積が存在せず、携帯や収納ではまったくかさばらないという圧倒的な優位性と、一瞬で該当の一文を表示できる検索が容易である点が大きな特徴と言えます。
実際、ジャンプスの社員が紙の書籍より電子書籍を選ぶのも、かさばらず、情報検索が容易であるという点が大きな理由です。

デジタル書籍の致命的なデメリットは、紙に比べて脳の処理能力が低くなる点?

教育現場でデジタル教科書を採用する場合のデメリットとして、紙の書籍に比べて記憶の定着が難しいと言われています。
現状の様々なデバイスのモニタに表示するデジタル書籍では、上記で「集中力や記憶力の処理が低下する可能性」として挙げた人間の脳の処理能力への影響があるようなのです。

いったい何が、人間の脳の処理に影響を与えるのでしょうか?
デジタルデバイスでは、たとえばスクロール、フォントサイズ変更などインターフェースの操作や、ブックマークやメニューなどの周辺情報といった読書以外の要素が視界に入りやすく、注意が分散されがちということはもちろんあるでしょう。
それ以外にも、以下のような紙との違いが脳の処理に影響を与えると考えられています。

バックライトの影響

多くのデバイスはバックライトを使用しており、これが目の疲れや認知疲労を引き起こします。
その結果、長時間の読書で集中力が低下し、情報の保持が困難になることがあります。

テキストの視認性

紙の書籍に比べて、スクリーン上の文字は視認性が劣る場合があります(画面の反射や低解像度など)。
これが読解速度や記憶への影響を及ぼすと考えられています。

深い処理の欠如

紙の書籍では、読み手が自然とページ間で行き来しながらテキストを「再確認」することが容易で、内容を深く理解するのに役立ちます。
一方、デジタル書籍では操作が面倒なため、こうした行動が減少します。
そうするとスクリーン上での読書は「浅い処理」になりやすいとされ、情報をその場で理解しても、深く整理されず短期記憶に留まりやすいということがあるようです。

こういった致命的なデメリットが解決されない限りは、紙の書籍がこの世からなくなり、完全にデジタルへと媒体が移行するのは難しいかもしれません。

見やすく読みやすいWEBサイトデザイン

こういったデジタルのデメリットを知ることは、WEBサイト制作の現場でも、ユーザビリティの向上に役立ちます。
近年、ダークモードなど目に優しいデザインがトレンドとなっていますが、単純に流行りのデザインというだけではなく、ライトによる目の疲労を軽減させることでユーザーの脳の処理を上げ、より見やすいホームページにすることができます。

また、色使いやフォントサイズの工夫で視認性を上げることや、読み手がページ間の行き来をしやすくする操作性の良さなども、ホームページを制作する際、紙に比べたデジタル画面のデメリット低減と脳の処理能力を上げるために重要であると言えるでしょう。

一方、紙の良さであるコレクション性や紙の質感を大切にしたデザイン、販売戦略等が、これからの印刷業界ではデジタルとの差別化を図る上では特に大切になる可能性がありそうです。
逆にデジタル媒体でも、コレクション性や質感体験の再現が可能であれば、紙の良さをデジタルに移行させられるということです。
紙の質感やページをめくる感触の再現等は、ハード面の進歩しだいのところはありそうですが、コレクション性という部分は工夫しだいで新たなビジネスコンテンツの可能性を秘めているかもしれませんね。